ちょっと大きめの書店に入り、ビジネス書の棚を前にすると、“ビジネスマンのための◇◇”、“ビジネスエリートが実践する▲▲”と云った背表紙が目につきますが、その伏せ字部分には、多種多様なテーマがはめ込まれています。
ビジネスマンはまだしも、ビジネスエリートの定義が曖昧な日本で、従来型ハウツー本の域を出ないようにみえる書籍の氾濫には、いささか圧倒されます。
それでも、私自身、不案内な分野への簡便な入門書として、そんな書を手に取ってみる機会も多数ございます。
「知の巨人」と言われた故立花隆氏も、新しい分野の取材への第一歩は、書店で数多くの入門書を手当たり次第に買い集めて読み込むことであったと伺いましたが、やはり玉石混交のようです。
ちょっと視点を変えて、自分が良く知っている分野の入門書を読む場合は如何でしょうか?
私は、きちんと時系列やカテゴリー等の分析により、自分自身の知識をまとめてくれ、読後に整理整頓された情報を第三者に理路整然と説明できるようにしてくれるかを測ります。
結果として、いろいろ逍遥したあげく、何故に“ビジネスエリートになるための・・”と云う陳腐な枕詞を冠したのか、理解に苦しむような高度な入門書に出逢ったケースもありますので、なかなか油断がならないものです。
Amazonで「ビジネスマンのため」、「ビジネスエリート」という語を使って検索を掛けると、たちまちに下記のような書籍が上がってきます。
とりあえず、各々の語でランダムに10冊挙げてみますが、これだけでも、そのバラエティが理解できます。
とりあえず、各々の語でランダムに10冊挙げてみましたが、これだけでも、そのバラエティが理解できます。
検索したリストを見ると、日本のビジネスパーソンの関心事が見えてくるように感じます。
それは以下のように、カテゴリー分類が可能で、どのような書籍が各々に当てはまるか、みてみましょう。
● Skill & Technique (手腕と技巧)
そのため、アイデアや企画の発想力、プレゼンテーション力、基礎的なWord, Excel, Power Pointの技術、語学力といったビジネス上の基礎体力の取得は個人の責任とされているようで、一番の関心事です。
そのようにした取得したBusiness Skill & Techniqueにより、現場での仕事にあたる、日本のビジネスパーソンの姿が浮かび上がってまいります。
● Culture & Education(教養と知識)
教養から雑学まで、社会人として知っておけばビジネスでも個人の人生においても役立つような知識ですが、集中して学んだことが無い分野への関心です。
欧米のビジネスパーソンがビジネスをBusiness Schoolのような大学院で専門的に学び、大学Under Graduateでは別の分野を学ぶ事例が多いのに比し、日本のビジネスパーソンは幅広い知識への関心が高いようです。
こうして身に着けた Culture & Educationはビジネス現場において、一回り大きな器をみせるようで、その円滑化や迅速化に資するようです。
● Health & Physical(健康と体調)
健康維持はビジネスパーソンの必須条件で、さらには運動習慣を巡る議論からの体形維持まで、幅広い関心事です。
定期的な健康診断は、今では雇用主たる企業が義務として課す制度になっておりますが、ビジネスパーソンも日常生活の中で身に着ける Health & Physical の知識は自分自身を護るチェックリストです。
● Mind & Spirit
(心の平安と精神の在り方)
平常心や泰然自若とした在り様は、混沌とするビジネス情勢にブレない姿勢として求められるものです。
また、近年メンタルヘルスへの取り組みが社会的な注目を集めるにあたり、関心が高まっております。
それ以上にMind & Spiritの正常な抑制は現代人の必須要件でしょう。
● Social & Communication
(社交と対人関係)
他人との接触にあたり、コミュニケーションの能力や技術、あるいは他人に与たえる印象、恥ずかしくない着こなし等は意外と気づかないものですので、関心も高く成ります。
ビジネスパーソンとしての常識であるSocial & Communicationの知識は決して一朝一夕で身に着くものではないようです。
また、個々人のレベルが上がれば、企業のコーポレート・フィランソロフィの意識も高まるのではないでしょうか。
● Current Affairs & Topics
(時事問題)
いわゆる時事問題や新しい技術への関心事です。
Current Affairs & Topicsへの関心は、より良い世界への第一歩でしょう。
● Money & Investment (お金と投資)
経済的基盤が確立されなければ安心してビジネスシーンで戦えないのは自明ですが、消えた年金、老後2,000万円問題以降、投資と経済的自立への関心が高まったようです。
実は私たちが生きる高度資本主義社会を俯瞰するためには、Money & Investmentの知識が欠かせないものなのです
ChatGPTに「日本のビジネスパーソンがその生活の中で関心をよせる事柄を、事実調査を基にして箇条書きにせよ。」と問いかけると次のような回答がありました。
日本のビジネスパーソンが関心を寄せる主な事柄(2020年代以降の傾向)
ChatGPTは『各種の調査(例:内閣府、経済産業省、リクルート、民間の意識調査など)や報道を基にまとめた。』としておりますが、大まかなところでは、大型書店をぶらついた感覚と同等のモノでしょう。
とすると、冒頭の“ビジネスマンのための◇◇”、“ビジネスエリートが実践する▲▲”と云ったタイトルは、それが示すような読者ではなく、極々、普通の就労者向けに出版されていると解釈するのがよさそうです。
<参考>
[ 2025.05.30 ]
[執筆者プロフィール]
一燈。1980年大手証券会社入社。企業派遣留学として米国でMBA取得。その後、シンガポール・香港駐在を通じアジアビジネスに、 また本社経営企画部門で経営戦略の立案等に関わる。