コラム

なりすまし対策の強化へ。今こそ見直したいオンライン本人確認の仕組み



Ⅰ :改めて問われている本人確認の信頼性

2026年9月下旬、カーシェアリングサービス「タイムズカー」のWebシステムが第三者による不正アクセスを受け、大規模な個人情報漏えいが発生しました。同社の公表によると、対象となるアカウント数は約660万件にのぼり、また本人確認書類の画像についても、約146万件の暗号化データに外部送信の痕跡が確認されています。

こうした状況を受け、2026年10月9日、金融庁は金融機関等に対して「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について」と題する注意喚起を行いました。この中で金融庁は、サイバーセキュリティ対策の点検に加え、非対面での本人確認の徹底を求めています。

本人確認は、金融サービスをはじめとするさまざまなオンラインサービスを安全に提供するために欠かせない仕組みである一方で、近年は、オンライン取引の普及や不正手口の巧妙化が進んできており、従来の本人確認方法で十分な信頼性を確保できるのか、改めて見直す必要性が高まっています。

Ⅱ :オンライン本人確認の普及と、巧妙化するなりすましの手口

近年、銀行口座の開設や金融サービスへの申込み、各種オンラインサービスの会員登録など、さまざまな場面で、非対面による本人確認が実施されています。利用者は店舗へ足を運ぶことなく、スマートフォンなどを使って本人確認を完了できるようになり、サービスの利便性は大きく向上しました。

こうしたオンライン本人確認で広く利用されてきた方法の一つが、本人確認書類をスマートフォンで撮影し、画像送信する方式です。運転免許証やマイナンバーカード、在留カードなどの本人確認書類を撮影し、必要に応じて本人の顔写真や動画などと組み合わせることで、非対面でも本人確認を実施できるというものです。

一方で、こうしたオンライン完結の本人確認では、対面で実物の本人確認書類を確認する場合とは異なり、提出された画像や情報をもとに、その書類が真正なものであるか、申請者本人であるかを判断する必要があります。特に近年は、生成AIをはじめとする画像生成・編集技術も進歩しており、本人確認書類や顔画像の偽造に対する警戒も必要になっています。

昨今のオンライン本人確認サービスでは、リアルタイム撮影や顔照合、ライブネス判定など、なりすましを防止するためのさまざまな技術が活用されているため、画像を利用した本人確認が直ちに安全性の低い方法というわけではありませんが、不正な手口が巧妙化する昨今においては、本人確認書類そのものの真正性をより確実な方法で検証する仕組みが重要となってきます。

Ⅲ :法改正でも進む本人確認方法の転換

こうした本人確認を取り巻く環境の変化に対応するため、制度面でも本人確認方法の見直しが進められています。

従来までの非対面での本人確認においては、上述したような、本人確認書類の画像と本人の容貌画像を送信する方法が認められてきましたが、2027年4月の法改正によって、こうした本人確認書類の画像送信を受ける方法は廃止され、ICチップ情報の読み取りを利用する方法へ原則一本化されます。

さらに、2026年10月9日に金融庁が公表した注意喚起では、上記施行日を待たず、ICチップ情報の読み取りを活用した本人確認への可及的速やかな対応を求めています。金融機関をはじめとする対象事業者にとっては、2027年4月に向けた制度対応に関わらず、現在の本人確認方法を早期に見直すことも重要な課題となっています。

Ⅳ :ICチップを活用した本人確認が信頼性を高める理由

ICチップを活用した本人確認が注目されている理由は、本人確認書類に記録された情報の真正性を、電子的な仕組みによって検証できる点にあります。マイナンバーカードや運転免許証、在留カードなどにはICチップが搭載されており、スマートフォンなどでICチップを読み取ることで本人確認に必要な情報を取得できるほか、ICチップに記録された電子署名などを検証することによって、正当な発行主体によって作成されていること・改ざんされていないこと等を確認することができます。

そのため、例えば第三者が運転免許証などの画像を不正に入手した場合でも、ICチップの読み取りと適切な検証が必須となっていれば、画像だけを使って本人確認を突破することは不可となります。

Ⅴ :いまこそ見直したい本人確認の仕組み

法改正によって本人確認方法の見直しが必要となっている企業にとっては、2027 年 4 月という明確な期日までに本人確認方法を見直す必要がありますが、一方で、今回の制度改正の直接的な対象とならないサービスにおいては、差し迫った外部的な制約はないかもしれません。

しかし法改正への対応が必要ないからといって、現在の本人確認方法が必ずしも最適であるとは限りません。個人情報の漏えいやなりすましの手口が巧妙化している今だからこそ、自社の本人確認フローをいま一度見直してみてはいかがでしょうか。

本人確認の目的や求められる水準は、サービスの内容や取り扱う情報、想定されるリスクによって異なります。そのため、すべてのサービスで同じ本人確認方法を採用すればよいというものではなく、自社のサービスに適した仕組みを検討することが大切です。

例えば、次のような観点から、現在の本人確認フローを確認してみるとよいでしょう。

取得する情報が不足していないか、または過剰になっていないか

本人確認書類の偽造・改ざんへの対策は十分か

利用者の利便性を確保できるか

運用面での負担は適切か

本人確認方法の見直しでは、単に厳格にすればよいというわけではありません。安全性を高める一方で、手続きが複雑になり、利用者の負担が増えてしまう可能性もあります。だからこそ、セキュリティ、利用者の利便性、運用負担などを総合的に考慮し、自社のサービスに適した本人確認方法を選ぶことが重要となります。

まとめ

オンラインサービスの普及により、非対面での本人確認は、私たちの生活やビジネスに欠かせない仕組みとなりました。一方で、本人確認書類の偽造やなりすましなど、不正手口が巧妙化しており、本人確認の信頼性を確保することがますます重要になっています。

こうした中、ICチップを活用した本人確認は、電子署名などの検証によって本人確認書類の真正性を確認し、偽造やなりすましへの対策を強化できることから、今後のオンライン本人確認を支える重要な技術として期待されています。

企業にとっては、自社サービスに求められる本人確認の水準と、利用者の利便性を考慮し、適切な本人確認方法を選ぶことが重要です。本人確認の信頼性・安全性を高めながら、利用者にとって使いやすい仕組みを実現することが求められるでしょう。

 


公的個人認証サービスご紹介ページ